志賀理江子(しが りえこ)は、1980年愛知県生まれの日本の写真家であり、その独特な視点と表現力で国内外から高い評価を受けています。
彼女の作品は、個人的な体験や社会的な出来事を通じて、人間の存在や記憶、時間の流れを探求するものが多く、特に東日本大震災後の作品は深い感動を呼び起こします。
この記事では、志賀理江子の経歴、主要な作品、そして彼女の写真に対するアプローチについて詳しく紹介します。
経歴と背景
志賀理江子は、愛知県岡崎市で生まれ育ちました。
高校2年生の頃から独学で写真を撮り始め、東京工芸大学芸術学部写真学科に入学しましたが、半年で中退。
その後、1999年にロンドン芸術大学チェルシー・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザインに入学し、2004年に卒業しました。
2007年度には文化庁在外派遣研修者として再びロンドンに滞在し、そこでの経験が彼女の作品に大きな影響を与えました。
2008年、志賀はロンドンの公営団地の住民たちを撮影した写真集『Lilly』と、オーストラリアや仙台市での滞在制作をもとにした『CANARY』で第33回木村伊兵衛写真賞を受賞しました。
この受賞を機に、彼女の名は広く知られるようになりました。
宮城県への移住と震災の影響
2008年秋、志賀は「松林と海の美しさに一目惚れした」という理由で宮城県名取市の北釜地区に移住しました。
地域カメラマンとしてお祭りや運動会などの行事を撮影しながら、居住者のオーラルヒストリー作成を開始。
しかし、2011年3月に発生した東日本大震災で、彼女のアトリエや作品も含め、全住民の住居が流されるという大きな被害を受けました。
震災後、志賀はその経験を作品に反映させ、2012年にはせんだいメディアテークで個展「螺旋海岸」を開催。
この展示は、震災と震災で亡くなった人たちへの「悼み」をテーマにしており、大きながらんどうの空間に人物や石などを写した写真がゆるやかにグループ分けされて展示されました。
主要な作品とテーマ
『Lilly』と『CANARY』
志賀の初期の代表作である『Lilly』と『CANARY』は、彼女の独特な視点と表現力を示しています。
『Lilly』はロンドンの公営団地の住民たちを撮影したもので、彼らの日常生活を通じて人間の存在や社会の一面を捉えています。
一方、『CANARY』はオーストラリアや仙台市での滞在制作をもとにした作品で、異なる文化や環境の中での人間の営みを描いています。
『螺旋海岸』
震災後の作品として特に注目されるのが『螺旋海岸』です。
この作品は、震災の影響を受けた地域での体験をもとに、人間の存在や記憶、時間の流れを探求しています。
展示では、写真の裏が見えるように配置されており、写真が持つ「見えない領域」を示す試みがなされています。
『ブラインドデート』
2017年に丸亀市猪熊弦一郎現代美術館で開催された個展『ブラインドデート』も、志賀の重要な作品の一つです。
この展示では、21台のスライドプロジェクターや音、光を使ったインスタレーションが行われ、鑑賞者に新しい感覚をもたらしました。
この作品は、写真が単に目で見るものではなく、聞く、触る、味わうといったあらゆる感じ方の繋がりの中に存在することを示しています。
『ヒューマン・スプリング』
2019年に東京都写真美術館で開催された個展『ヒューマン・スプリング』では、志賀は「春」というテーマを通じて人間の存在や社会の複雑さを探求しました。
この展示では、写真が持つ「わからなさ」から語りが生まれる可能性を示し、鑑賞者に深い問いを投げかけました。
写真に対するアプローチ
志賀理江子の写真に対するアプローチは非常に独特であり、彼女の作品はしばしば「わからなさ」や「見えない領域」をテーマにしています。
彼女は写真を通じて人間の存在や記憶、時間の流れを探求し、社会の複雑さや個人の体験を表現しています。
演出とインスタレーション
志賀の作品は、しばしば大規模なインスタレーションとして展示されます。
彼女は展示空間全体を使って、鑑賞者に新しい感覚をもたらすことを目指しています。
例えば、『ブラインドデート』では、スライドプロジェクターや音、光を使ったインスタレーションが行われ、鑑賞者に新しい感覚をもたらしました。
社会との接点
志賀は写真を通じて自身と社会の接点を求めています。
彼女の作品は、個人的な体験や社会的な出来事を通じて、人間の存在や記憶、時間の流れを探求しています。
特に震災後の作品では、震災の影響を受けた地域での体験をもとに、人間の存在や記憶、時間の流れを探求しています。
写真の「わからなさ」
志賀の作品は、しばしば「わからなさ」や「見えない領域」をテーマにしています。
彼女は写真が持つ「わからなさ」から語りが生まれる可能性を示し、鑑賞者に深い問いを投げかけます。
例えば、『ヒューマン・スプリング』では、写真が持つ「わからなさ」から語りが生まれる可能性を示し、鑑賞者に深い問いを投げかけました。
まとめ
志賀理江子は、その独特な視点と表現力で国内外から高い評価を受けている日本の写真家です。
彼女の作品は、個人的な体験や社会的な出来事を通じて、人間の存在や記憶、時間の流れを探求するものが多く、特に東日本大震災後の作品は深い感動を呼び起こします。
志賀の写真に対するアプローチは非常に独特であり、彼女の作品はしばしば「わからなさ」や「見えない領域」がテーマになっています。
彼女の作品を通じて、私たちは人間の存在や記憶、時間の流れについて深く考える機会を得ることができるのではないでしょうか。